『プロメテウス・トラップ』福田和代

 

プロメテウス・トラップ (ハヤカワ文庫JA)

プロメテウス・トラップ (ハヤカワ文庫JA)

 

  天才ハッカー“プロメテ”こと能條良明が、天才オタク青年”パンドラ”を相棒に強大な敵に挑む……と聞くと、なるほど、それこそNetflixで公開されていた『Mr.Robot』とかその辺りを思い浮かべるところだけれど、本書はあまりサイバーテロに対するコテコテの技術紹介というのが出て来ない。戦いではあるけれども、プロメテが回答に辿り着くまでの道筋であって、最後まで読んでみるとああ確かに綺麗な一本道だったなと思える。ある出来事に対して、実はこうだったんだ、別の出来事に対してそれは実はこうだったんだ、と丁寧に消化していく印象。

 かっちりとしたアウトラインがあって、そのアウトラインの全容が見えてくると「ああ、こいつが怪しいな」というものが見えてくる。そう考えるとミステリとも言える。ハッキングは「ハッキング」という言葉ですべてクラックできるようになっているし、パソコンと回線さえあればオッケーというその点においてはハッキングものとしての臨場感は薄い。ネットワーク上での戦いが少なく、ソーシャルハッキングもチェスもどこかで観たような展開。ディープブルーを出すのももはや手垢。スノーデン事件も作中の事件と引き合いに出てくるけれど実際スノーデン事件の方がとんでもない事件だったわけで。

 とはいえFBIという組織を中心とした刑事モノと考えると次々に事件は起こるし、爆発もあるし、で刑事モノ組織モノとしてとても秀逸、綺麗な展開を見せるのでハッカーノベルということを一端横に置いて、FBIvsサイバーテロ組織のドンパチと考えるとすんなり頭に入ってくるかもしれない。

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