読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『恋する寄生虫』三秋縋

 

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

 

 

 プラトニックな恋愛を描いている小説は多くあるけれど、そのプラトニックさに介在しているものが”寄生虫”であるとするならば、この世にひとつしかないのではないかと思われる。
 『恋する寄生虫』とタイトルにあるように、いや、そのままの意味で寄生虫は恋をする。寄生虫が「恋」しているのではなくあくまで恋をするのは人間の方だ。この構図の中に放り込まれたのが失業中で重度の潔癖症である高坂賢吾と視線恐怖症不登校女子高生佐薙ひじり。ふたりの出会いからその過程、結末までなにひとつ普通ではないのだけれど、その普通とはなんだろうかと考えさせられる。
 高坂と佐薙はこの「普通」を選択せざるを得ない状況に追い込まれる。ただし、そこで提示される普通というものは私たちにしてみればごく自然な状態と思えるもので、ある種高坂が佐薙との新しい「普通」を造り上げることを選択する展開は、途中のハラハラから安らかな気持ちで読み終えることが出来る。「普通じゃない」状況に陥るふたりの行く末、得に佐薙ひじりが恋を愛をどのように考えているか、じっくりと読み込んでみて欲しい。きっと佐薙ひじりが恋しくなる。

広告を非表示にする