『屋上のテロリスト』知念実希人

 

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 

 佐々木沙希の突拍子もない、いや、到底女子高生の行動力とは思えない動きを見せて、彼女の行動はエスカレートし(最初から極まっているのだけれど)最後の最後まで加速することを止めない。語り手である酒井彰人は彼女の壮大な計画に巻き込まれていく。

 彼女が作中で何をしでかしたのか、本書の表紙を手に取ってもらえるとなんとなくは想像が出来るかも知れない。テロリスト?背後の爆発?そう、”概ね”正しい。概ねとしたのは、是非そのまま読み進めてもらいたいからだ。そうやって言うと、じゃあ今考えたこととは別の結果が描かれているのではとネタバレを危惧するかもしれないけれど、まあ読み進めて欲しい。沙希が生み出すスピードに、そんなこと言っていられなくなってしまうから。とにかく色んなことが、様々な大人が、国が、佐々木沙希という女子高生に翻弄される。読んでるこちらに息をつかせない。

 とはいえ、佐々木沙希という少女、酒井彰人以上に物語の中心となっているこの女子高生が少しばかり”チートキャラ”として描かれているのが気になるところではある。佐々木沙希が繰り出してくるのは、この物語世界の大人を、特に政治家や軍人、その他多くの大人達にとっての「ドンデン返し」であって、物語そのもののドンデン返しではないところが気になってしまうのだ。展開のスピードを優先するためには佐々木沙希を止める展開は選択出来なかったのだろう。もちろん読了してみると「確かにそうだ」と思える。

 ただ、あまりにも「起きること起きること、物事が上手くいきすぎている」と思えてしまうのは、個人的には惜しいと感じた。伏線を回収するにしても、「実はこうだったんです」と言われても「いや、待て待て」となる要素が特に終盤に散見される。

 物語全体的に、カーブの連発、宙返りから、ひねりまでコースに組み込んだハラハラドキドキするジェットコースター、というより、ひたすら真っ直ぐの直線を最高速度で駆け抜けるドラッグレースのような感覚だ。この読後感は展開に唸るというよりも、そう、スカッとするという方が正しいのかも知れない。

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